神奈川産業保健推進センター

よくある質問(Q & A)

産業保健Q&A

 産業保健Q&Aは、各産業保健総合支援センターにこれまでよせられた相談内容のうち、よくある質問への回答をまとめたものです。
 回答内容についてさらに詳しくお知りになりたい方は、当センターへお問い合わせください。

産業保健Q&A検索システム 労働者健康安全機構のサイトにリンクします。

当センターのメールマガジンに掲載したQ&Aなどを掲載いたします。

Q1 有機溶剤業務の特殊健康診断における尿中代謝物検査を当社でも実施しているが、トルエンを取り扱っている作業者の尿中の馬尿酸の検査結果が異常に高い値を示すことがある。作業環境測定結果も第1管理区分を継続しているので、作業環境は適正に管理されて いるはずである。本当に業務によるものか疑問を持っていたが、最近、様々な食品などに含まれる物質の代謝物が影響しているということを聞いたが、法令上、必ず実施しなければならないか。
Q2 親企業による構内下請事業者に対する安全衛生指導について
Q3 請負事業で働く労働者に対して、発注者は指揮命令を行ってはならないと聞きましたが、技術指導等を行うとこれに違反することになるのでしょうか。
Q4 過重労働の面接指導の実施の基準となる時間外労働時間数は所定労働時間超えが対象になるのか?
Q5 労働安全衛生規則第13条1項第3号で3000人を超える労働者を使用する事業場にあっては、2人以上の産業医を選任することとなっているが、専属1名、嘱託1名でもよいか?
Q6 親会社の専属産業医が子会社の嘱託産業医を兼ねることができるか?
Q7 安全衛生委員会でどの位の委員が出席していれば安全衛生委員会を開催したことなるのか?
Q8 最近、派遣労働者を受け入れたが、雇入れ時の健康診断を実施しなくてはならないか?
Q9 定期健康診断を6月に実施しています。
4月入社の新入社員に対して、6月の定期健康診断をもって、「雇入時健康診断」として良いのか? あるいは4月入社の新入社員は、4月に雇入時健康診断を実施し、さらに6月には別途、定期健康診断を実施しなくてはいけないのか?

A1  有機溶剤中毒予防規則第29条(健康診断)で、同条で定める項目及び別表の下欄に掲げる項目について、医師による健康診断を行わなければならない旨規定されている。当該別表では、トルエンについては「尿中の馬尿酸の量の検査」の項目が定められている。
 また同条第4項で、「・・健康診断(定期のものに限る。)は、前回の健康診断において別表下欄に掲げる項目(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査に限る。)について健康診断を受けた者については、医師が必要でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、当該項目を省略できる」と、一定の場合に代謝物の量の検査を省略できることが規定されている。 この省略に関しては、「有機溶剤中毒予防規則第29条・・に規定する検査の・・健康診断項目の省略の要件について」(平成元年8月22日付け基発第463号、改正平成10年3月24日付け基発第122号)の通達で、その要件を具体的に示している。 当該通達では、「尿中の馬尿酸の量の検査以外の検査」と「尿中の馬尿酸の量の検査」に分けてその要件を示している。馬尿酸については、次の(1)又は(2)のいずれかの要件を満たす場合としているが、最終的判断は、「産業医等の医師が当該作業現場の実態を十分に把握して、総合的に行うべきものである」としている。
(1)の要件
連続過去3回の有機溶剤健康診断で異常と思われる所見がないこと。
連続過去3回の尿中の代謝物の検査結果で、明らかな増加傾向や急激な増減がないと判断されること。
今回の健康診断において、表1(省略)に掲げる自覚症状又は他覚症状のすべてについて、その有無を検査し、その結果、有機溶剤業務による異常と思われる所見がないこと。
作業環境の状態及び作業の状態等が従前と変化がなく、かつ、その管理が適切に行われていると判断されること。
(2)の要件
連続過去3回の有機溶剤健康診断で異常と思われる所見がないこと。
今回の健康診断において、表1(省略)に掲げる自覚症状又は他覚症状のすべてについて、その有無を検査し、その結果、有機溶剤業務による異常と思われる所見がないこと。
連続過去3回の作業環境測定結果の評価がすべて第1管理区分であること。
作業環境の状態及び作業の状態等が従前と変化がなく、かつ、その管理が適切に行われていると判断されること。

 この通達の平成10年の改正では、トルエンの尿中馬尿酸の省略要件を見直し、(2)の要件が追加されましたが、この改正の趣旨は平成10年6月22日付け労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長の事務連絡で示されています。それによると、尿中の馬尿酸の量の検査に関する実態調査、研究結果等の知見から、尿中馬尿酸を生ずる可能性のある飲食物は、清涼飲料水類、柑橘類、食品添加物、風邪薬等、極めて多岐に及ぶため、これらの飲食物に由来する馬尿酸が当該検査に混入することを完全に排除することが現実的には極めて困難であり、作業環境が適切に管理されている場合であっても、飲食物の影響により尿中の馬尿酸の値が上昇する場合のあることが明らかとなった。 このため、従来の要件((1)の要件のこと。)に加えて、作業管理や作業環境管理が適切で暴露が十分に低く抑えられていると考えられる場合((2)の要件のこと。)においても、医師の判断により当該検査を省略して差し支えないとした旨解説されています。従って、ご質問の場合が、(1)の要件を満たさない場合でも、(2)の要件を満たす場合であれば、医師の判断により、トルエンの代謝物の検査を省略して差し支えないことになります。
 また、当センターの調査研究のページで、この改正の元となった調査研究報告書が掲載されていますので、そちらもご覧ください。
http://www.kanagawas.johas.go.jp/kenkyu/H8_2.pdf
A2  親企業と構内下請事業者の関係は、次の図1のように注文者と請負業者の関係であり、一定の仕事の完成に対して報酬を支払うことを約した請負契約に基づきます。また、業務委託の場合も同様の関係となります。注文者は、あくまでも注文者の立場として、注文上の指図を行うことは差し支えありませんが、これを超えて、直接、下請労働者に対し業務指示などの指揮命令を行うことはできません。
 仕事の完成に係る仕事の指示のほかに、労働安全衛生法においては、親企業による構内下請事業者に対する安全衛生指導の義務が規定されています。具体的には、親企業の労働者が、請負契約により親企業の構内で就業する下請事業場の労働者と混在しながら作業を行う場合には、元方事業者(元請事業者、親企業)は労働安全衛生法第29条により一定の義務を負っています。つまり、下請事業者が法令に違反しないように指導する義務、下請事業者が法令等に違反していると認めた場合に是正指示をする義務が同条に規定されています。
 また製造業の元方事業者で、その労働者と関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、17年の改正で、作業間の連絡調整を行うこと、一定の事項について合図・標識の統一を行わせることなどの措置を講ずることが定められました。これらの趣旨は、構内下請事業者は、親企業内の機械設備などを使用することが多く、その作業場所が親企業の構内であることなどから、自主的な努力のみでは十分な災害防止の実をあげられない面があるので、全般的な権限を有する元方事業者に義務を負わせることとしたとされています。
 請負契約に基づく仕事の指示や安全衛生指導については、原則として、直接、注文者の指揮命令により行うことなく、注文者は、一定の仕事の指図や安全衛生指導を請負業者の責任者に行い、当該責任者が自社の責任において配下の労働者を指揮命令することとなります。

図1 請負形態
図1
(注)図は画面の表示幅によっては正しく表示されない場合があります。以下同じ。

 ところが、請負という形式で行われている場合であっても、注文者が下請労働者を、直接指揮命令している場合が認められるところですが、そのような場合には、ご質問の「派遣法がらみの偽装請負」という観点から問題となる場合があります。なお、この場合、形式的な契約形態ではなく、実態により判断されることとなります。
 まず、労働者派遣事業の形態について説明すると、図2の関係となります。従来から人材派遣は禁止されていましたが、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させ、当該他人に対し当該労働者を当該他人のために雇用させることを約してするものを含まない」という形態だけを取り出し、労働者派遣法において、この労働者派遣事業の形態に限って認めることとしたものです。

図2 労働者派遣事業の形態
図2
 さて、図1の請負形態をベースにして、注文者と下請労働者の間に指揮命令関係が存在する場合は、その形態は、次の図3のような関係になります。

図3 偽装請負
図3
(*)注文者が労働安全衛生法上の事業者責任を問われることとなる。

 この図3と先の図2とは一目見ればお分かりのように、大変似た関係となっています。
 企業では、請負関係であると考えていたとしても、その請負形態は形式であって、実態は労働者派遣事業の形態であるとされ、労働者派遣法が適用される場合があります。その結果、実態は労働者派遣事業の形態であるにもかかわらず、請負形態に偽装していると判断されることとなるわけです。これが「偽装請負」です。
 そこで、労働者派遣ではなく請負により事業を行っていると判断されるためには、第一に、自らが使用する労働者の作業遂行に当たって当該請負業者が直接指揮監督を行うこと、第二に、請負業者が自己の業務として注文者から独立して処理することが必要となりますが、この判断基準は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区別に関する基準」(労働省告示第37号)として公表されています。仮に、偽装請負と判断されると、請負契約上の注文者は、実は派遣先事業者として、下請労働者の行為について、労働者派遣法で読み替えた労働安全衛生法上の事業者責任が問われることになります。

 厚生労働省のウエブサイトで、派遣労働者に対する指揮命令について、次のQ&Aが掲載されていますので、参考にしてください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai07/index.html
A3  請負事業が、労働者が発注者の指揮命令を受けて行われる労働者派遣事業ではない適正なものであると判断されるためには、次のいずれの要件も満たすことが必要となります。
  (1)請負事業主が、自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること。
  (2)請負事業主が、業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理すること。

 請負事業において、発注者は、上記1の(1)又は(2)の要件を逸脱して労働者に対して技術指導等を行うことはできませんが、一般的には、発注者が請負事業で働く労働者に対して行う技術指導等とされるもののうち次の例に該当するものについては、当該行為が行われたことをもって上記1の(1)又は(2)の要件に違反するものではないと考えられます。
[例]
請負事業主が、発注者から新たな設備を借り受けた後初めて使用する場合、借り受けている設備に発注者による改修が加えられた後初めて使用する場合等において、請負事業主による業務処理の開始に先立って、当該設備の貸主としての立場にある発注者が、借り手としての立場にある請負事業主に対して、当該設備の操作方法等について説明を行う際に、請負事業主の監督の下で労働者に当該説明(操作方法等の理解に特に必要となる実習を含む。)を受けさせる場合のもの
新商品の製造着手時において、発注者が、請負事業主に対して、請負契約の内容である仕様等について補足的な説明を行う際に、請負事業主の監督の下で労働者に当該説明(資料等を用いて行う説明のみでは十分な仕様等の理解が困難な場合に特に必要となる実習を含む。)を受けさせる場合のもの
発注者が、安全衛生上緊急に対処する必要のある事項について、労働者に対して指示を行う場合のもの

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 厚生労働省では、ここに例示された技術指導等の範囲であれば先の基準に違反するとはみなさないと解釈しているようです。
 この[例]のハに、「安全衛生上緊急に対処する必要のある事項」とありますが、安全衛生上の指示といえども、前述したルートで指示を行うことが原則であって、緊急の場合に限り、緊急避難として、ハの直接指示が許されるとしていると思われます。  
A4  結論から記載しますと過重労働面接指導の対象となる時間外労働時間数は所定超え時間外労働ではなく、法定超え時間外労働時間が100時間を超えた場合です。労働安全衛生規則第52条の2では面接指導の対象となる労働者は「休憩時間を除き、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり100時間を超える者」と定められております。また、「1週当たり40時間を超えた労働させた時間」の算定方法については平成18年2月24日付け基発第0224003号で、次の式により算定することとされています。
1カ月の総労働時間数(労働時間数+延長時間数+休日労働時間数)-(計算期間の総暦日数/7×40)
ここで、計算期間の総暦日数は30日又は31日となります。この式を計算しますと30日の月は171時間台、31日の月は177時間台となります。この時間を100時間以上超えた場合には原則として医師による面接指導を受ける必要が生じるということななります。
A5  昭和47年9月18日付け基発第601号の1で「第1項第3号は専属の産業医を選任すべき事業場及び数を規定したものである」と通達されていることから、2名とも専属の産業医である必要があります。 
A6  平成9年3月31日付け基発第214号により、次の全ての要件に該当する場合には可能です。
@地理的関係が密接であること。
A労働衛生に関する協議組織が設置されている等労働衛生管理が相互に密接に行われていること。
B労働の態様が類似している等一体として産業保健活動を行うことが効率的であること。
C専属産業医の職務遂行に支障を生じない範囲であること。
D対象労働者の総数が3000人を超えないこと。
A7  安全衛生委員会が成立するための要件は労働安全衛生法では定められておりません。安全衛生委員会自身でその成立のための要件を決めておくべきものです。労働安全衛生規則第23条第2項では、「委員会の運営について必要な事項は、委員会が定める」と規定されておりますので、安全衛生委員会で事前にその成立要件を定めておく必要があるということです。例えば全委員の2/3かつ労使各委員の1/2等と委員会で定めておくこととなります。なお、その他必要な事項としては委員会の招集、議決のルール等も定めておく必要があります。
A8  労働安全衛生法等では労働者を雇用した事業者が義務を負うのが原則です。しかし、派遣労働者の場合には雇用する者(派遣元)と指揮命令する者(派遣先)とが別であるという特殊な関係にあることから、一部の条文について労働者派遣法第44条から47条の2で、派遣先を使用者とみなすという読み替え規定を設けております。なお、読み替え規定の定めがない場合は原則により、雇用している派遣元が義務を負うということとなります。雇入れ時の健康診断はこの読替規定が存在しませんので、原則どおり、派遣元が雇入れ時健康診断を実施する義務がありますので、派遣先はその実施義務はありません。産業保健に関する主な規定を派遣元の義務か派遣先の義務かで整理すると次のようになります。
●派遣元に責任が課されているもの
  雇入れ時健康診断、一般定期健康診断(事後措置等を含む)、過重労働に係る医師の面接指導 等
●派遣先が義務を負うもの 
  有機溶剤等の特殊健康診断(事後措置などを含む)、作業主任者の選任や作業環境測定等の有害物に関する規制 等
●派遣元・派遣先の双方に責任が課されているもの
  産業医・衛生管理者の選任、衛生委員会の設置 等 
  なお、この場合の例えば労働者50人以上という規定があれば、派遣労働者については、派遣元、派遣先の双方で人数に含めるということになります。
A9  労働安全衛生規則第43条の雇入時の健康診断に関し、関係の通達(昭23・1・16基 発第83号)では、「雇入れの際とは、雇入の直前又は直後をいう」との解釈が示され さらに昭和47年9月18日付け基発第601号の1では「本条(労働安全衛生規則第43条)は 常時使用する労働者を雇い入れた際における適正配置、入職後の健康管理の基礎資料に資するための健康診断の実施を規定したもの」、平成5年4月26日付け事務連絡でも「雇入時の健康診断は、常時使用する労働者を雇入れた際における適正配置、入職後の健康管理に資するための健康診断であること」との解釈がされています。
 雇入れの「直後」がいつか、明確には示されていませんが、考え方としては、入職後の健康管理の基礎資料、配置部署の決定の参考資料に使うことから、概ね1カ月以内に実施することが望ましいため、6月の健康診断を代替とすることは難しいと思われます。

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