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相談員から一言 バックナンバー

『衛生委員会の活性化のヒント』

 平成31年6月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が公布され、平成31年4月1日から改正された労働安全衛生法令が施行されています。
 労働安全衛生法令では、長時間労働やメンタルヘルス不調などにより、健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、産業医による面接指導や健康相談等が確実に実施されるようにし、産業保健機能を強化するとともに、産業医の独立性や中立性を高めるなどにより、産業医等が産業医学の専門的立場から労働者一人ひとりの健康確保のためにより一層効果的な活動を行いやすい環境を整備するため、産業医の在り方の見直しが行われました。 
 この改正による取り組みは、労使が一体となって行う必要があります。そのためには、衛生委員会又は安全衛生委員会において、労働者の危険又は健康障害を防止するための基本となるべき対策などの重要事項について、十分な調査審議を行う必要があります。
 産業医の活動と衛生委員会等との関係の強化についての主な改正事項は、次のとおりです。
 事業者は、産業医から勧告を受けたときは、勧告を受けた後、遅滞なく勧告の内容、勧告を踏まえて講じた措置 又は講じようとする措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨、その理由)を衛生委員会等に報告しなければならない。
 産業医が衛生委員会等に産業医学の専門的な立場から、労働者の健康管理等について積極的に提案できるよう、産業医は、衛生委員会等に対して、労働者の健康を確保する観点から、必要な調査審議を求めることができる。産業医が衛生委員会等に対して調査審議を発議するときは、発議の趣旨等を産業医から他の委員に説明する必要があることから、産業医は、衛生委員会等に出席する必要がある。
 事業者は、衛生委員会等の開催の都度、これらの委員会の意見、当該意見を踏まえて講じた措置の内容、これらの委員会における議事で重要なものを記録し、これを3年間保存しなければならない。そのため、衛生委員会等の意見、当該意見を踏まえて講じた措置の内容等が具体的に記載された議事録を保存することなどが必要となる。
 
~ 衛生委員会の問題点と改善 ~
 このように、衛生委員会等においては、従来の「危険性有害性の調査及びその結果に基づき講ずる措置」、「長時間にわたる労働による労働者の健康障害防止対策」、「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策」、「ストレスチェックの実施方法、集団的分析、職場環境改善」など衛生管理や健康障害の防止及び健康保持増進の議題においても、産業医による産業医学の専門的な立場からの積極的な意見、提案が得られる体制づくりが必要となります。
 事業場での衛生委員会等の問題点を聞くと、「毎月実施できない」、「衛生については委員会で何をするかわからない」、「トップ、委員の出席率が低い」、「産業医が出席してくれない」、「審議の場でなく報告の場となっている」、「議題がマンネリ化している」、「委員会の議事概要を従業員に周知していない」など、いろいろな問題点が上がっています。
 特に、委員会における議題は、「災害発生報告」やそれに関連した「原因及び再発防止対策」、その他事務局からの「報告・伝達事項」等の議題とされることが多く、委員会の活動のマンネリ化が指摘されています。
 衛生・健康管理水準を継続的に向上させるための意見交換による調査審議し、合意事項が施策に反映するにはどうしたらよいか、衛生委員会等のあり方を見直しに色々悩やまれることがあります。問題なのは、委員会を開いてはいるが、本当に委員会が調査審議機関として十分に機能せず、そこで合意された事項が実現されるようなフォローアップがないことでもあります。
 
~衛生委員会等の活性化のヒント~
総括安全衛生管理者である議長や産業医、衛生管理者の意見をうまく活用する
 委員会の活性化は職場風土にも影響するといわれる。事業場の最高責任者である総括安全衛生管理者(議長)や産業医の衛生・健康管理に対する姿勢が、委員会の活性化にも結びつき、延いては、事業場の衛生・健康管理全体の活性化に現れてきます。
 これからの委員会は、事業場の衛生・健康管理活動の確保、改善に対する意識を向上させるための職場風土づくりとしての広い観点から意識していくことが大切となります。そのためには、事前にどういう形で審議を進めるのかということを議長や産業医と根回しも含めて検討して進めることが活性化のポイントとなります。委員会の進め方(シナリオ)作りです。場当たり的に進めると、大きく方向がずれる場合もあり、それをやり直すのは大変な苦労をともないます。
 事務局の役割として、委員会の事前説明し、検討事項や進め方の相談、確認をするとともに、産業医からも専門的な立場からの意見を事前に聞くことがポイントとなります。また、審議後の事後措置について、関係職場への対応も職制で指示してもらうように確認することも必要となります。
 
従業員代表の衛生委員を職場での衛生・健康のコアとしての育成を意識していく
 委員が審議での意見の聴集する場合、委員自体は一部の職場での衛生に関する知識を経験しているが、最近の安全衛生関係法令の改正、行政の安全衛生関連動向、個別の衛生・健康管理の知識があると意見も活発になりやすくなります。委員の能力のレベルアップを向上させるためにも、委員会を通して衛生・健康情報を発信したり、産業医による知識教育又は外部機関での講習会に参加し、必要な、または最新の衛生・健康管理に関する内容の習得する機会を企画することもポイントになります。
 会社側の委員としての産業医または衛生管理者や職場管理者は継続して選任されますが、従業員代表の委員は任期によって一定期間での限定した活動となります。従業員代表委員を期間中に、衛生・健康教育等の能力向上を積極的に働きかけて、委員退任後は事業場の衛生・健康に関する職場のコア的な存在として育成することも、委員会を設置している大きな意義となり、委員会での新たな意見、提案、審議に結び付けていくことができます。
 
事務局の役割が活性化のポイントとなる
 委員会の報告、審議での活性化を図り、単なる報告会で終わらないように、委員会では、必要に応じて産業医の指導を受けながら衛生・健康管理に関する資料の作り方、配り方も重要です。審議事項に必要な資料はできるだけ職場でも活用できるものとして、審議内容により委員会の開催の前に事前配布することで委員の意識を高め、委員会での審議を促進することができます。
 また、委員会での説明はビジュアル化を考慮して、デジタル写真を盛り込んだパワーポイントなどのプロジェクター機器を使用することで、審議において問題点が共有できて効果的となります。要改善などの指摘箇所だけでなく、他職場で好事例となる箇所も写真等で紹介して話題づくりをすることも活性化につながってくることになります。
 委員会では、どうしても安全に関する議題が多くなり、衛生・健康管理に関する審議事項は健康診断の結果が中心で他の衛生・健康管理の議事や報告が取り上げられなく、委員の関心も薄くなる傾向となります。したがって衛生・健康に関する事項も意識して議題として提案するとともに産業医、衛生管理者等の衛生・健康管理に関係する委員の提案や話題提供などで活発にすることが必要となります。
 委員会に実際に提案する調査および審議事項は、事業場の衛生・健康管理状況、衛生・健康活動状況、衛生・健康ニーズ、行政の動向等を考慮しながら適切な事項を委員会として選択することになりますが、委員会で選択した調査及び審議された事項が実効のあるものとなったか、具体的施策としてどのように生かされているかが委員会の重要なポイントであり、具体的に提案し、委員の意見を聴取する議長、産業医、事務局の役割が大きく影響すると考えられます。
 
衛生委員会の活性化のポイント
◎委員会での審議事項と報告事項等の資料は必要に応じ事前配布する。
◎委員の出席率が向上する対策を行う。(開催日の固定、欠席を常習化させない)
◎委員会開催前に、事務局は議長及び産業医など関係者との事前打ち合わせを行う。 
◎議長が積極的にリーダーシップをとり、全員が積極的に発言するように促す。
◎事務局はコーディネート機能を発揮する。
◎委員に対して教育を行う。
◎審議事項の結論は明確にする。(議事概要の全員への周知)
◎事業者は委員会における合意事項、産業医の提案は施策に取り込み実施する。
◎委員会で合意された衛生・健康対策の実施手続きの流れを明確にする。
◎予算措置も含め、合意事項の実施時における担当部署を明確にする。
◎事務局は合意事項による施策の検討、措置の実施、改善等のフォローを行う。
 
(文責 相談員 前田啓一)
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