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相談員から一言 バックナンバー

『自動車運転死傷行為処罰法違反容疑による逮捕』

 平成26年6月11日、無免許で車を運転中てんかんの発作を起こし死傷事故を発生させた男性が自動車運転死傷行為処罰法違反の容疑で逮捕されたと報じられました。警察庁によれば、「病気の影響」を理由とした逮捕は全国初です。この法律は、酒や薬物の影響による死傷事故のほかに、てんかん、統合失調症など特定の病気による死傷事故等についても処罰対象に加え、罰則を強化して今年5月から新たに施行されています。

 てんかんなど特定の病気の場合は、病気の影響で正常な運転に支障があるおそれのある状態で、その状態であることを自分でも分かっていながら自動車を運転し、その結果、病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合に適用されます。法律が制定された背景には、てんかんなどの持病を有する者が、治療薬を適切に服用せず、運転中に病気による発作により意識を消失、重大な死傷事故に繋がったケースが起きていることなどがあります。*1

 このような事故が業務中に発生すれば、使用者には安全配慮義務とともに、民法上の使用者責任並びに人身事故の場合には自動車の運行供用者としての責任が生じます。道路交通法には、一定の疾病のある者について免許の交付拒否または保留制度がありますが、病気を申告しないで免許を取得・更新している例もあり、事業者は業務で従業員に車を運転させる場合には健康管理について特段の配慮が必要です。
 厚生労働省は、「意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断における留意点について」(平成26年5月30日 基発第0530第4号)を発出し、健康診断及び健康診断実施後の措置について、関係事業者等への指導を徹底することとしています。
 
 通達要旨は以下のとおりです。
(1) 業務上、自動車(大型特殊等)を含む運転に従事する者(業務上、移動手段として自動車を利用する者を含む)等に対し、労働者の健康・安全の確保のために必要な場合は、雇入れ時又は定期の一般健康診断において、意識を失った、身体の全部又は一部が一時的に思い通りに動かせなくなった、活動している最中に眠り込んでしまった等の症状の有無を確認することが望ましいこと。
(2) 健康診断実施後の措置として、必要がある場合には、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(健康診断結果措置指針公示第7号)2(4)
*2に留意し、労働者の意見等も勘案しつつ、適切な事後措置等を講ずる等必要な対策をとること。
 
(3) 1で確認することとした労働者に関する情報について、漏洩等の防止、健康情報を取り扱う者に対する監督等、その取扱いに十分留意すること。*3

*1 2011年4月、鹿沼市内でてんかん治療薬の服用を怠った移動式クレーン車の運転手がてんかん発作により意識を消失、通学路の歩道に突っ込み児童6人が死亡した事故等がある。

*2 就業上の措置の決定等(労働者からの意見の聴取等、衛生委員会等への医師等の医師の報告等、就業上の措置の実施に当たっての留意事項)

*3 労働安全衛生法に定める健康診断の実施及び面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしはならない(労働安全衛生法第104条)。
 
(文責)相談員  中山 絹代
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