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相談員から一言 バックナンバー

『本年度・全国労働衛生週間のスローガンを読んで』

 今回の労働衛生スローガン「健康管理 進める 広げる 職場から」を読んでいたら定期健康診断の事後措置について、糖尿病と熱中症についてのこの夏の経験が頭をよぎったので、これについて筆をとりました。
 今年はさすがに節電より熱中症予防を優先する意識が普及したので助かりましたが、冷房無しには過ごせないキビシイ夏でしたね。そんな夏も過ぎ、最近はめっきり涼しくなりました。あろうことか、8月12日に高知県四万十市の最高気温が41.0℃となり国内最高記録を更新したことなど、今となってはすっかり忘れてしまいそうです。

 ところで皆様の職場では、定期健康診断の事後措置をどの程度に実施していますか。健康配慮の責任を果たすには、健康診断実施後に保健指導等を実施するだけでなく、必要に応じて就労制限等の具体的な対応をする必要があります。たとえば糖尿病の労働者が熱中症のリスクの高い現場で作業する場合に、皆さんの職場では特別な配慮をしていますか。

 糖尿病の人は、高血糖により自立神経の障害や末梢の血流障害が起きていて体の一部で汗が出にくいなど、熱中症リスクは健常者に比べて高くなります。汗で失った成分を補うのにスポーツドリンクなどNaを含む飲み物が推奨されていますが、同時にスポーツドリンクに含まれる糖分は、糖尿病の労働者にとっては不都合です。健康な労働者ならばこまめな飲水を指導すべきですが、糖尿病の労働者は同じようにスポーツドリンクをこまめに飲んだら過剰な糖分の摂取となりすぐに高血糖になるでしょう。そんな指導は出来ません。かといって糖尿病の方のために、糖分抜きの飲料を指導するなどの細かな配慮はされましたか?それはそれで結構難しい対応ですよね。

 確かに「自分の健康は自分で管理」は基本です。とは言え自分から「糖尿病だから暑熱環境の作業には特段の配慮をしてください」とは言いづらい職場の雰囲気もあるでしょう。じゃあ「申し出が無いから配慮しない」が通用する時代でもありません。なにか事が起これば、安全/健康配慮責任を問われます。当然に事業者は定期健康診断結果を知る立場にあり、産業医の意見を聞く立場にあるのですから、定期健康診断事後措置として積極的に健康確保の工夫を、現場ごとに実施するようにしてください。

 なお今回は糖尿病と熱中症を例に挙げましたが、そのほか高血圧症と寒冷や過重労働などの関係性を含め多くの健康配慮の要素が存在します。特殊健康診断と違い定期健康診断の事後措置は事業者責任の所在が分りづらいかもしれませんが、定期健康診断も労働者の健康確保について、先の述べたごとく事業者に求められる健康管理義務としての側面がありますので、定期健康診断結果についても単に保健指導に留まらず、折角の貴重なリスク管理の情報源として労働者の健康管理に有効に活用して頂きたいと望みます。
 
(文責)相談員  村上 稔
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