本文へ移動

相談員から一言 バックナンバー

『ノートパソコンや携帯電話機のボディの話』

ノートパソコンや携帯電話のボディの材料は大変燃え易い材料でできていることをご存知でしょうか。最近の製品はマグネシウム合金でできています。
 
 この合金は、軽く(比重1.8)て、丈夫(比強度が高い)で、振動や衝撃を吸収し易く、放熱性や電磁波遮蔽性能がよく、薄肉成型性に優れていて、またリサイクルが容易であるなど多くの優れた性質を持っています。一方、腐食され易く、燃え易いという欠点も持っております。
 
 昔は写真屋さんで写真を撮る時に、マグネシウムを焚いてフラッシュにしていたのをご存知の方もおられると思います。マグネシウム合金の粉は、極めて活性で容易に燃えます。もちろんアルミ合金の粉末も燃えますが、アルミよりも燃え易いのです。マグネシウム合金が最近使われるようになった背景には、軽く、難燃性のマグネシウム合金が開発され、以前のものより燃えにくくなっており、また、プラスチックと同様に射出成型で成型する技術が開発され、大量に速く造れるようになったためです。プラスチックと同様に射出成型機の中に溶けたマグネシウム合金を入れてプレスするプレスフォージング法が開発され、製造が極めて容易になりました。
 
 マグネシウム合金でボディをつくる工程で、しばしば労働災害が発生しています。射出成型機から出てきた成型品のバリを取り、表面をハブ研磨で仕上げ、その後表面を化成処理します。この工程で、金属の粉が発生します。これが何らかの火種で燃えたり、爆発したりして作業者が火傷を負うことがあります。また、このダストは水に触れると反応し水素を発生します。水素が設備の隅などに溜まるとガス爆発する危険性もあります。
 
 このように水と激しく反応するので、この金属で火災が発生した場合には水で消火することができません。金属火災用の消火器を用いて消火します。
 
 衣服や身体に静電気が帯電するとその放電火花も発火の原因となります。金属の粉末が作業着に付着していると、静電気の火花で発火することがありますので、粉塵が付着しないよう清潔にする必要があります。電気掃除機で吸引すると掃除機の中に粉じんが溜まり、これも出火の原因になります。
 
 静電気が溜まらないよう静電気除去マットを使用したり、帯電防止作業着や静電安全靴を身に付ける等の対策が必要になります。
 
 作業台の上のマグネシウム合金ダストは濡れた雑巾で拭き取るのがよいとされています。ヤスリ掛けやバフ研磨等をする作業場では局所排気装置を設置し、ダストを取り除く必要があります。乾式の集じん機は爆発の危険性がありますので、集塵したダストはスクラバーの水で処理する局所排気装置にする必要があります。
 
 以上述べましたように、マグネシウム合金は軽くて丈夫で優れた性能を持っていて、ますます用途が広がりますが、それを加工する作業現場では、いろいろ注意が必要な材料です。安全衛生教育の徹底が強く求められます。
 
相談員(衛生工学)鶴岡 寛治
TOPへ戻る