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相談員から一言 バックナンバー

『暑熱対策のすすめ』

前月号で「職場における熱中症の予防について」が取り上げられました。
 
 厚生労働省の発表によると、平成11年から平成20年の10年間で熱中症による死亡者数の合計は193人であり 、毎年20人前後の死亡者が発生しているとのことです。
 
 死亡者数の推移は下記の通りです。
 
 業種別発生状況(平成20年分)の死亡者数は17人でその内訳を見ると建設業が9人で凡そ約53%を占め、次いで製造業が5人で約29%となっています。年齢も20代2人30代3人40代6人50代3人60代3人となっています。
 
 熱中症は夏場に多いという傾向がありますが平成18年~平成20年の3ヵ年でみると52人の死亡者のうち7月23人8月22人計45人で2ヶ月間で約86%を占めています。
 
このように7月、8月に集中していることから熱中症対策を万全にすることが重要です。
 
 最近、各企業においては熱中症に関心が高まりつつあり、職場の環境改善に取り組んでいるところもかなり見られます。
 
 これは平成21年6月19日、厚生労働省、基発第0619001号“職場における熱中症の予防について”にも示されているように、WBGT値(湿球黒球温度)の活用、WBGT値に係わる留意事項等、積極的に夏場における熱中症対策に取り組むよう働きかけた為と思われます。
 
 企業においては、空調を実施している所と作業形態によっては空調が困難な所があります。
工場全体を空調することが建て屋の構造上等から困難であると判断された所については、スポットクーラー、扇風機等によって涼を取り熱中症対策を実施している所も少なくないように思われます。
 
 何れにしても、予防対策として作業環境管理、及び作業管理をすすめ、そして健康管理に留意した取り組みが行われていることは言うまでもありません。企業においてWBGT指標計を備えているところは、まだ少数と思われますが、職場の環境状況を把握するためにも何らかの測定が必要です。

 そこでWBGT基準値を知るために、乾湿温度計から得られた乾球温度(気温)と乾湿示差(乾球温度-湿球温度)から換算表により相対湿度を求めおおよそのWBGT値を計算することが出来れば熱中症対策も一段と進むのではないかと思われます。
 
 このような方法について“日本生気象学会”が「日常生活における熱中症予防指針」Ver.1 2008.4において“WBGT値と気温・湿度との関係”が報告されています。この報告書を見ますと気温と相対湿度からWBGT値を推定することができ、参考になると考えここに紹介します。
 
 この表は例えば、気温31℃、相対湿度80%の場合、WBGT値は31℃となり環境温度は“危険”な状態にあると評価されます。
この気温と相対湿度からWBGT値を換算する方法は日常生活のみならず職場においても参考として活用できると思います。
 
 乾湿温度計を用いて気温と相対湿度を測定する場合、スポットクーラー、扇風機等の影響のない床上1.5メートル程度の位置に乾湿温度計を設置し測定するようにして下さい。
 
 測定は午前10時ごろ及び午後2時ごろの2回位を目途に行い、その結果を記録し周辺で作業している作業者に結果を知らせ、工場内の掲示板等を利用し掲示し、工場内放送を通じて注意喚起するど同時に水分補給、塩分補給等、管理を徹底することが重要と思います。
 
 気温と相対湿度からWBGT値を換算する表は乾湿温度計設置場所等に記録用紙と一緒に保管し、毎日測定、記録 し管理を徹底することが必要です。管理責任者を決めて管理させると良いでしょう。
 
又大きな事業場で、WBGT指標計があれば乾湿温度計による乾球温度(気温)と乾湿示差から得られる相対湿度との相関関係を求めて参考にすると良いと思います。
 
 乾湿温度計を上手く活用して熱中症予防対策に役立てこの夏を元気に乗り切りましょう。
 
*参考資料 日本生気象学会:“日常生活における熱中症予防指針”Ver.1(2008.4)
(労働衛生工学)相談員 白須吉男
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