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相談員から一言 バックナンバー

『パワーハラスメントについて』

今年4月、10年ぶりに精神疾患による労災認定の判断に用いられている「職場における心理的負荷評価表が」改正されました。「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」は最もストレス強度の高い業務上の出来事として新たに追加されました。セクシャルハラスメントに関しては平成18年10月に事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針が出され、事業主の法的義務がうたわれていますがパワーハラスメント(以下パワハラ)はまだ日本では法律によって定義されたものはありません。パワハラという言葉を造った㈱クオレ・シー・キューブの岡田康子さんによると「会社での職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて継続的に人格を侵害する行為を行い就業者の働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること」と定義されています。パワハラによって精神障害を発生した場合、民事上の損害賠償責任、労災補償が問題となります。近年、裁判でパワハラによる自殺が業務上によるものとの判断が相次いで出ています。
 
 では一体どんな場合がパワハラになるのでしょうか。
 
 労働ジャーナリストの金子雅臣さんは以下のように「職場のいじめ」をタイプ別に分けています。
1.リストラ型・・・解雇せずに自己退職に追い込む
2.職場環境型・・・閉鎖的な職場(軍隊式、体育的、異質排除)
3.人間関係型・・・希薄な人間関係での摩擦
4.労働強化型・・・仕事中心主義の職場の人間関係
5.セクハラ型・・・女性に対して差別的な職場など
 
 では実際企業の中でパワハラが起こるとどんな損失をもたらすのでしょうか。
 2005年に中央災害防止協会が行った「パワハラの実態に関する調査報告書」(複数回答)によると
 ・社員の心の健康を害する(82.8%)  ・職場風土を悪くする(79.9%)
 ・本人のみならず周りの士気が低下する(69.9%)  ・職場の生産性を低下させる(65.5%)
 ・十分に能力が発揮できない(59.3%)  ・優秀な人材が流失してします(48.3%)
 ・企業イメージを悪くする(37.3%)  ・訴訟による損害賠償など金銭的負担が生じる(27.3%)
 
 などが挙げられていました。
 
 今回(7/24・25)に開催された日本産業精神保健学会でも『職場における心のスペース-ハラスメントとメンタルヘルス-』と題しシンポジウムが行われシンポジストとして前出の岡田康子さんが職場のハラスメントがもたらす悪影響と題し講演をされていました。
 
 パワハラは実際に行われた行為が、該当するかどうかはそれぞれの人間関係によっても変わってきます。また実際に暴力を振るったり屈辱や侮辱等の人格否定など第三者が見て明らかのものや意見を無視したり、孤立、不当な待遇など第三者からはわかりにくいが、加害者の悪意のある意図の明らかなもの、深夜労働を強要したり、過度の叱咤激励など労務管理の延長として第三者にも見えにくく、加害者本人も自覚がなく行われる場合があるものなどがあります。パワハラと認定するためには、行為の内容や違法性の有無などについて、行為の発生過程と頻度などの時間的経過について、行為者の性格や病理性、悪意の有無等、受けての感じ方やダメージの大きさ等の心理面、その他加害者・被害者の力関係や周囲のサポートの有無などの状況要因等総合的にジャッジする必要があります。
 
 実際に社内でパワハラが起きてしまったら、被害を受けた社員に対する迅速で適切なフォロー、社内調査や問題解決のための対応、メンタルヘルス対策、加害者を含めた社員への教育、ハラスメントに関するガイドラインの作成と社内周知、再発防止等に努めなければなりません。
 
 このようなことが起こらないためにも、日頃からコミュニケーションを大切にして信頼関係を築き、風通しの良い職場環境と人間関係を構築して快適でかつ安全な環境づくりを心がけて頂きたいと思います。
 
相談員(メンタルヘルス) 三澤 眞理子
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