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相談員から一言 バックナンバー

『新型インフルエンザについて』

はじめに:
 
 未だに流行が続くメキシコに端を発した新型H1N1インフルエンザも、第一波は日本全国を巡った感があります。そして世間でも新型H1N1インフルエンザにまつわる情報は、風評や事前予測としてではなくある程度の確実な情報として、周知されつつあるように感じられます。今後、第二波、第三波が予測されますが、産業衛生の現場として、これまでの知見から今後の対応などをまとめてみました。なお詳細に関しては、添付資料(各ホームページ)を参照してください。
 
経緯と現状:
 
 今春3月中旬以降にメキシコで発生したらしい新型H1N1インフルエンザで、メキシコ保健省は4月22日に20人が死亡と報告、注意を喚起をしました。これ以降、メキシコをはじめ北米で患者が続々と確認され、4月28日にはWHOがフェーズを4に引き上げ 、我が国でも厚生労働省は感染症法に基づく「新型インフルエンザ等感染症」の発生を正式に宣言しました。4月30日には警戒フェーズ「5」に引き上げられ、成田空港でアメリカから帰国したインフルエンザ患者を隔離する騒ぎとなったのは、まだ記憶に新しいことだと思います。このあと渡航歴のない患者の発生に続き国内でも感染が各地に拡大し、6月19日 国内感染者が700人を超し、新たな感染症に対する水際作戦の困難さを痛感させられました。なおWHOは6月11日にフェーズ「6」に引き上げましたが、加えてこのウイルスの病原性は低く、「重度」より軽く「軽微」より重い「中」程度だとの認識を示しています。
 
 6月29日には沖縄でも初の新型インフルエンザ患者発生し、同県下で猛威を振るいました。神奈川県でも8月20日には「流行開始」となりましたが、患者の大半は20歳以下で乳幼児~学童の感染拡大と重症化が、9月からの新学期の課題となりました。その後、20歳以下の感染拡大が起きたため、同時に濃厚感染労働者にあたる親は、これを出勤停止としていた企業にとって直接的な労働力低下となりました。 神奈川県において、発生より第44週(10月26日~11月1日)の定点医療機関当たりのインフルエンザ患者の報告数が、国立感染症研究所が定める指標である「30」を超えたので、インフルエンザ流行警報が発令されています。同週の患者の年齢別割合は、5-9歳が40%、10-14歳が33%、0-4歳が11%となっており、20歳未満が9割以上を占めております。 全国に目を向けると11月18日の時点で、新型インフルエンザで入院した累計人数は7708人、その内14歳以下の人数は6500人で84.3%となっています。また基礎疾患を有する入院患者2755人ので最も多かった基礎疾患は慢性呼吸不全で1865人(67.7%)でした。
 
ワクチンについて:
 
 季節性インフルエンザワクチンの生産減少のため品薄感もあり、10月中は各医療機関でワクチン不足が深刻でした。毎年行われていた企業内での接種もこの影響なのか、ワクチンの供給不足で混乱したようです。現在、ほとんどは新型インフルエンザの流行ですが、新型H1N1ウィルスへの効果はともかくとして、A香港型やB型インフルエンザが今後流行する可能性を考えると、季節性インフルエンザワクチンの接種は推奨されます。
 新型インフルエンザワクチンの接種は優先順位があり、医療従事者ー 妊娠中の女性ーじん臓・心臓・呼吸器に病気・障害のある方、免疫機能不全の人ー5歳以下の乳幼児、ついで小中学生ー高校生ー65才以上のお年寄りとなります。最近、接種開始時期を前倒しして実施することが決まり、行政広報等に掲載されていますので御確認ください(以下に簡単に記)。
 
1 前倒しして接種を開始する対象者・接種開始時期
 
○ 接種対象者  小児(1歳から小学校3年生に相当する年齢の方)
○ 接種開始日  12月7日 月曜日から
 
2 1以外の接種対象者の接種開始時期
 
○ 接種対象者  基礎疾患を有する方(その他)
※基礎疾患を有する方のうち、最優先の接種対象者以外の方
○ 接種開始日  12月7日 月曜日から
 
・当初のスケジュール(12月上旬)どおりの接種開始となります。 新型インフルエンザワクチンに関して厚生労働省は、鹿児島県の女性がワクチン接種後に新型インフルエンザに感染して、11月25日に死亡したと発表しています。新型ワクチンの予防接種により、同インフルエンザにかかりにくくなったり、感染しても重症化を防いだりできる効果があるとされますが、全てに有効性がある訳ではないようです。なお本症例は入院後にタミフルの投与もされていました。
 
おわりに:
 
 今春までは、「新型インフルエンザ」=「鳥インフルエンザ由来の強毒性ウィルスの流行」というのが一般的な認識であり、日本政府および企業の懸念の中心だったため、すでに新型インフルエンザ対策をしていた多くの企業は、強毒性ウィルスが発生した場合を想定していました。それはそれでリスク管理として重要だった訳ですが、実際に経験した「新型インフルエンザ」は、感染性は高いものの一般労働者層の重症化は稀でした。夏を過ぎた頃にはこれまでの対策が的外れだったことに気づいた訳ですが、皆様の企業においては速やかに現実的な対策を変更できたでしょうか。多くの情報源を確認することで、的確な対応を迅速に取ることが出来ると考えます。たしかにインフルエンザ対策は労働力確保の面からも重要なテーマですし、またこれから新型インフルエンザが高病原性に変異する可能性も否定できません。しかし現時点で知り得る情報をもとに、他の産業保健業務との優先順位を考慮し、3M(ムリ、ムダ、ムラ)のない、バランスの取れた対応が望まれます。
 
以下は関連するホームページ:
 
 
神奈川県 新型インフルエンザ相談窓口等について
 
 
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