本文へ移動

相談員から一言 バックナンバー

『メンタルヘルスに関する悩みは“心の耳”を利用して解決を』

 厚生労働省の調査では、うつ病の患者が100万人を超え、この10年間で2.4倍に急増しています。仕事上で強い不安や悩みを抱えている人も6割を超え、職場での心の病対策が注目を浴びています。
 
 こうした状況を踏まえて、厚生労働省では、働く人の心の健康確保と自殺や過労死予防のためのメンタルヘルスポータルサイト「こころの耳」を開設しました。このサイトには、メンタルヘルスに関する総合的な知識や情報が掲載されています。
 
 メンタル面で不安や悩みを抱えている働く人自身、そのご家族、または、事業主などメンタルヘルス対策に関わる人々や、メンタルヘルスの専門家等それぞれの立場の人が利用できます。無料で相談ができる機関の紹介等も掲載されておりますので、メンタルヘルスの面で悩みがあるとき、職場のメンタルヘルス対策で困ったときなど、どうぞ積極的にご利用ください。
 
 このサイトにも掲載されていますが、私が勤務する横浜労災病院でも無料で電話相談(045-470-6185)を行っており、専門の産業カウンセラーが365日(PM2:00-8:00)対応しています。また無料のメール相談は、私自身が全てのメールに24時間以内に返信しています。
 
 国内に限らず、海外からの利用者もあり、年間の利用件数は、電話相談が4千件、メール相談が6千件を超えています。
 
 このメール相談では、心身の不調を訴える相談者に対しては、専門医(精神科医、心療内科医)を受診することを促しています。自殺予防のためにはうつ病の早期発見、早期治療が必要です。自分自身ではこうした病気にかかっていることに気がつきにくいため、このメールが病院受診のきっかけになることもあります。
 
ここで、相談事例を一つご紹介いたします。
 
 「何をしていても生きがいがなくつまりません。死にたいです。」たったこれだけが書かれたメールが届きました。これが診察室であれば、年齢、男女、顔の表情などからある程度のことが推測できるのですが、このメールだけでは何もわかりません。そこで私は「メール拝見しました。年齢、お住まい、家族構成等もう少しあなたのバックグラウンドをお聞かせください。いつ頃から何について悩んでいるのでしょうか?」というメールを返信しました。するとすぐに「半年前に海外より帰国してから急に生きる力を失ってしまいました。人生やりつくした感です。生きていてもつまらないので自殺を考えます。生きるってなんですか。」という返信がありました。
 
 私はすぐに「お辛いご様子伝わってきます。死にたいという気持ちがあるようですが、これはおそらくうつ病によるものと思われます。ぜひ、近くのメンタルクリニックを受診してみてください。治療を受けることで、今の辛さは軽減すると思います。」と返信しました。うつ病になる方は、一般的に真面目で几帳面な人が多いので、こうした医療機関への受診の促しを行うことによってきちんと専門医を受診してくれます。また、早めに専門医にかかることによって自殺を予防することにもつながります。
こうしたやりとりの3ヶ月後に「人と接することで精神が癒されることに気がつきました。独りでいてはいけませんね。必ず生き続けます。山本先生ありがとうございました。」というメールが彼から届きました。私はこのメールを頂き非常に嬉しくなりました。
 
 日本の自殺者数は今、12年連続で3万人を超えています。1人でも自殺者数が少なくなって欲しいと常々思っていますが、そのためにも大切なことは1人で悩みを抱えないことです。あなたは家族、友人、職場の上司、同僚など身近に相談できる人がいるでしょうか?
 
 もし、誰も思い浮かばないという場合でも諦めずインターネットで「こころの耳」を開き、解決策を見つけてください。「あせらず、あきらめず、怠らず」の気持ちで生きていきましょう。
 
(文責)相談員 山本晴義
TOPへ戻る