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相談員から一言 バックナンバー

『省エネ対策の作業環境に及ぼす悪影響』

 30数年前のオイルショック以降、すべての業界において省エネ対策が積極的に実施され、一定の効果があったことは万人が認めている。しかし、この省エネ対策 が作業場の空気汚染の原因となった例をあげてみたい。
 グラインダーによる研ま作業において、ひと作業が終わりグラインダーの電源スイッチをオフにすると併設されている集じん装置の電源も遮断してしまうように電気回路を改造し、省エネを図った例を多くの工場で見受けた。その結果グラ インダーの回転に伴う随伴気流に微細な粉じんが含まれていて、回転が遅くなるに従って空気中に飛散する現象が見られた。
 また、囲い式フードの局所排気装置として機能するサンドブラスト装置やショ ットブラスト装置(密閉設備には該当しない。)でも電源スイッチをオフにする と同時に集じん機も停止してしまうものがあった。これでは製品を取り出すために扉を開けると装置内部に浮遊しているじん肺の原因となる微細な粒子が作業室内に拡散し、作業場の空気を汚染する原因となってしまった。
 有機溶剤を使用する塗装、印刷、装着、洗浄等の作業及びその後の乾燥工程に おいても休憩時間、昼休時間、その日の作業終了と同時に局所排気装置、プッシ ュブル型換気装置や換気扇などの作業場の空気汚染を防止するための装置を省エネのために停止させてしまうことを見受けた。塗装等の作業がおわっても有機溶剤の蒸発は続いているので休憩時間等における有機溶剤蒸気の濃度が作業中よりも高いことが、作業環境測定の結果、しばしば見受けられた。
 家庭にあっても台所で魚や肉を焼いたり、天ぷらをあげたり、煮炊きなどの料理をするときには換気扇を稼働させるのは当然であるが、料理が終わると同時に 換気扇のスイッチを切ったら煙、臭気、熱気などが漂い、不快感を覚えるのではないか。料理が終わっても不快感の原因がなくなるまで換気扇は止めない方がよい。
 作業場においても、有害物取扱い作業にあっては作業終了後もしばらくの間、局所排気装置や換気扇などを稼働させておくことにより、省エネ効果をほんの少し削減するだけで健康に良い空気環境が確保できるのではないだろうか。
 実施しようとする省エネ対策が及ぼす負の影響を評価し、実施すべきか否かを判断すべきである。
 
文責(相談員) 阿部 龍之
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