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相談員から一言 バックナンバー

『健康診断における頸動脈超音波検査について』

 動脈硬化は
1)血管壁の性状の変化(血管内皮細胞機能障害)
2)血液成分の変化(血小板の粘着・凝集)
3)血流の変化(ずり応力)
により発症してきます。高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙、加齢、家族歴などが動脈硬化の原因として挙げられます。これらの状況はガイドラインで示され、これを基に治療をしているのが現状であります。しかし動脈硬化の程度は把握しないで治療を行っているのが現況です。この動脈硬化の程度の診断と血管を流れている流れの強さは把握していません。血管障害を引き起こすかどうかを見極めるために血管内の流速、流量、拍動の強さを診断できるのが超音波検査です。異常な程度の発見とその改善方法を知ることができます。そこで私は脳卒中予防も考慮したうえで頸動脈超音波検査を行っております。
 
頸動脈超音波検査
 
○ Bモード法
 血管の肥厚の状況の確認。不安定プラークの診断は難しい。
 
○ Pulsed Doppler
 最高流速(収縮期最高流速) Vmax
 拡張末期流速 Vd(EDV)
 平均血流速 Vmean(TAV)
 時間的空間的平均流速 TAVmean
 流速のインデックス PI,RI
 
○ Color Doppler
 血流の有無の確認 flow
 血流の方向性 flow direction(carotid flow reverse)
 
○ Power Doppler
 血流の存在確認
 血流の幅 residual lumen
 
○ Advanced Dynamic Flow
 低流速高流速まで全体の確認
  末梢血管の流速に影響を与える因子は、心拍出量、大血管の弾力性、末梢血管抵抗、流体の粘度、局所での血管の状態(プラーク)などであります。血管内の血流は中心軸流が速く、血管壁近傍は遅い状態になっています。
 
○ 拍動性インデックス〔Pulsatility Index(PI)〕
 流速流量血液粘度などにより影響を受ける状態が測定できます。
  一般に末梢血管抵抗が少ない組織に流入する血管は脈動性が少なく、反対に末梢血管抵抗の大きな組織に流入する血管では拍動性が高い。
  内頸動脈では脈動性が少なく(PI≦1.2)、外頸動脈では拍動性が高い(PI≧1.5)ことが解ります。
  実際に拍動性インデックスが高く血管壁に影響を与えているのが高血圧症、糖尿病であります。
  総頸動脈にこのインデックス値が高くなる高血圧症、糖尿病では内頚動脈と外頸動脈に分かれる分岐あたりに粥腫(プラーク)ができやすくなります。
  このプラークが不安定でありそこに強い流れやドロドロしたずり応力が強い状態で流れていたらプラークの破たんが起きるわけです。また、内頚動脈の流れが強いと脳にラクナ梗塞(無症候性脳梗塞)などができやすくなります。
  すなわち画像情報を基に異常な状況をできる限り正常化していく治療が最も要求される治療であると考えています。すなわち不安定プラークを安定化プラークになるように治療を行うことができる可能性を診断、治療、経過観察していくための非侵襲性検査法と考えています。そして脳に行く内頚動脈の流れが強い方には穏やかな流れになるように降圧薬の選択、血管拡張薬、血小板凝集抑制薬などの併用で治療をしていきます。

  頸動脈検査については熟練した検査技師がいることが必要であり、日常診療の片手間に行うようではしっかりとした治療計画に基づいた医療は行えません。大血管障害予防のために画像診断のための病診連携は欠かすことができません。
 
☆ 低流速高流速まで全体の確認 ☆
 末梢血管の流速に影響を与える因子は、心拍出量、大血管の弾力性、末梢血管抵抗、流体の粘度、局所での血管の状態(プラーク)などである。
 血管内の血流は中心軸流が速く、血管壁近傍は遅い。
 
Pulsatility Index(PI)
 
拍動性インデックス
  一般に末梢血管抵抗が少ない組織に流入する血管は脈動性が少なく、反対に末梢血管抵抗の大きな組織に流入する血管では拍動性が高い。
  内頸動脈では脈動性が少ない(PI≦1.2)。外頸動脈では拍動性が高い(PI≧1.5)。
 
(文責)相談員  倉田 達明
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