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相談員から一言 バックナンバー

『花粉症とインペアードパフォーマンス』

厳しかった冬が過ぎ春を迎える喜びは生き物に共通したものでありましょうが、この時期スギやヒノキの花粉症に悩まされ憂鬱な面持ちの方も少なく無いのではないでしょうか。昨年の猛暑の影響でスギは大量の花芽を着け、今年の花粉の飛散量はかなり多いことが予報されていますので、尚更心配なことでしょう。

 昔花粉症のために現役続行を断念し、引退した野球選手がいましたが、花粉症は少なからず日常生活のみならず仕事にも影響をもたらすことは周知の通りです。特に屋外での作業や車の運転など外気に触れる機会が多い場合、くしゃみや鼻水・眼の痒みなどは作業能率の低下だけでなく思わぬ事故につながることもあります。

 インペアードパフォーマンスとはあまり聞き慣れない言葉ですが、「インペアード」とは「正常な機能が損なわれた」状態を意味しますから、何らかの原因で通常のパフォーマンスが低下した状態を表します。花粉症の方は、花粉症の症状そのものがインペアードパフォーマンスの大きな要因になると言って良いでしょう。しかし、最近ではもう一つの要因がインペアードパフォーマンスを来すことが注目されています。

 花粉症の方は、マスクや眼鏡などの防護策の他に予防薬や治療薬で対処することが多いですが、内服薬として主に使われる抗ヒスタミン剤には、眠気や判断力・集中力の低下を来すものがあります。そのため、花粉症の治療によってもインペアードパフォーマンスを来すことがあるのです。この内服薬による影響は自覚され難く、気付かない内に仕事のミスや事故・災害の原因になってしまうことがあります。この薬によるインペアードパフォーマンスは、人によっても薬の内容によっても異なりますから、主治医と良く相談の上処方してもらう必要があります。

 毎春繰り返される花粉症の大騒ぎ、インペアードパフォーマンスのみならず医療費にも少なからぬ影響をもたらしているのではと危惧しております。近い将来免疫療法が普及し、この騒動が思い出話になることを願うものです。
 
(文責)相談員  千葉 宏一
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