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相談員から一言 バックナンバー

『健康習慣のすすめ』

人間の躰は約60兆ヶの細胞の集合体で出来ています、その内、脳細胞は150億ヶと云われています。
 普段、我々の躰ではこれらの巨大な細胞集団が見事な調和を保っており、毎日々々、古い細胞は遺伝因子(DNAとRNA)の命令に従い、各臓器別に一定の周期で、自分と同じコピーを造り出し、廃絶→再生の新陳代謝を繰返しつつ、生命を維持しています。その調和が崩れた状態が病気です。

 躰全体のバランスのとれた状態、即ち、健康な状態を100とすると、感冒などの外因的な原因や過労や、ストレスや食べ過ぎや、睡眠不足などの内因的な原因でのこのバランスが崩れると健康のレベルは0に近づいて行き、この状態の究極が「病気」となります。従って、健康でいるためには、正常であった昨日の状態を今日に
引き継ぎ、今日を明日に繋ぎ、何時までも前と変わらぬ状態に保つことが根本で、それには健康維持に対する日常の努力・工夫が必要となります。

 それには何を、どうすれば好いのでしょうか?私はかねがね、健康維持の基本は、食事、運動、休養のバランスを保つことだと思っています。どれが過剰になっても、不足しても駄目です。1965年、アメリカの医師BreslowとEnstromは、健康でいるための生活習慣を"Helth Habits"(健康習慣)と名付け、厖大な研究調査を行いました。

  健康習慣とは、ここにどれも極めて当たり前な次の8項目です。

1)たばこを吸わない
2)酒を飲まない、又は深酒をしない
3)規則的に運動をする
4)規則的に7~8時間寝る
5)適切な体重を維持する
6)朝食を食べる
7)間食をしない
8)8020 歯をよく磨く ※これは最近付け加えております。
 
 二人は1980年まで、15年間に亙りこの8項目と死亡率との関係を調査した結果、各項目で自分が実行しているものを1点、実行していないものを0点とすると、満点(8点)の群ほど死亡率が低く、特に男子にその傾向が強いという結果となり、8点の男子群の死亡率は0~3点の男子群の28%にすぎないことがわかりました。健康習慣の8項目をみますと、2)、5)、6)、7) は広い意味で食事と関係があり、3)、5)は運動、4)は休養と関係しています。 つまり毎日の生活の中で、健康維持には何よりも「食事」が重要な位置にあることがわかります。

 古来、日本の諺にも「腹八分目」「腹も身の内」などという戒めがあるのも個人の経験から得た生活の智慧だったと思います。
 振り返ってみると、第二次世界大戦までの長い間、日本人は「人生50年」が決まりでした。同じ頃、欧米諸国ではすでに「人生70年」を謳歌していました。この違いは、日本という資源のない貧乏国が社会機構も医療制度も西欧に比べて著しく遅れていたこともありますが、それにも増して、長年に亙って続いていた低蛋白、低脂肪のあまりに貧困な食生活、いわゆる「粗食」の弊害が日本人の体格を悪くし、脳動脈の血管を弱め、寿命を短くしていたことは否定できません。

 ところが日本は第二次世界大戦後、食糧事情が急速に好くなり、飽食の時代と云われる程国民の栄養状態が改善されたとたんに、今度は並居る先進国を抜いて、世界一の健康長寿国となりました。しかし、過ぎたるは及ばざる如く、グルメブームなどと云われる昨今、食生活の極端な洋風化は飽和脂肪酸(動物性の脂)の摂取過剰を招き、成人病の激増をみる結果となりました。医食同源という言葉があるとおり、私はつねづね健康な躰をつくるのも食事なら、病気をつくるのも食事だと考えています。自動車を走らすのにガソリンが必要なように、人間が生きて行く上に食べなければなりません。しかし自動車のガソリンタンクは一定の量しか入らないので、あまりガソリンを入れれば溢れてしまいますが、人間にはもっと自由な許容能力があるので、胃腸が受けつける限り、食慾の赴くまま好きなだけ食べても、摂取されたものは全て消化吸収され、エネルギーとして消費されなかった余分のカロリーは脂肪となって蓄積され、体重増加を来たします。このような過剰栄養摂取から、肥満、高血圧、動脈硬化、糖尿病などの食事源性成人病が惹起されます。
 
 つまり、健康を維持するためには適正なバランスのとれた食事(総合栄養)が必要であり、一方では健康であるが故に派生する健全な食慾の命ずるままの食べ過ぎにならないように、食べ方にも智慧が必要で、「頭を使って食べる」ことが大切だと思います。人間誰しも「不老長寿」を望まない人はいないと思いますが、残念乍ら人間は刻一刻老いて行くことを止めることは出来ません。しかし、老化のスピードを遅くして、限りある人生の後半をより充実したものにすることは可能です。そのためには運動(≒仕事)、休養(≒オフタイム)、食事(≒栄養)の関係をバランスよく、合理的に調和させることだと思います。
 最後に、厳しい世の中ですが、ユーモアの原点「いま、自分は非常につらく苦しい状況にある。だが、それにもかかわらず、相手に少しでも喜んでもらおうと、微笑みかけるやさしい心遣い」デーケン先生の言葉を付け加えさせていただきます。
 
(文責)相談員 三宅 仁
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