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産業保健看護職のひろば

相談員コラム

コロナ禍における健康支援 ~半年間のA社の状況をふり返る~
2020-11-06
コロナ禍における健康支援~半年間のA社の状況をふり返る~
産業保健相談員 小野田 富貴子
 
 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、社員を取り巻く生活環境や働き方は大きく変化し、弊社においても緊急事態宣言を期に、私達医療職も含め業務上可能な限りテレワークに移行しました。急激な環境変化への戸惑い、先の見えないコロナに対する不安や閉塞感の中での感染症対策等々、日々の健康支援を粛々と推進してきたのではないでしょうか。
 
○社員の状況について 
 在宅勤務となり通勤時間が無くなった分、運動や睡眠時間、家族と過ごす時間が増え体調が良くなったという者。自分好みの栄養、運動アプリで減量に成功した者。逆に間食が多くなり、活動量が減り太った者。自宅での作業環境や姿勢が悪く腰痛や肩こりを訴えている者。気温の変化に対する体温調節が悪く勤怠不良でうつ状態になった社員は、通勤が無くなった事でパフォーマンスが上がり勤怠も体調も整っている、逆に落ち着かず週の半分は出勤にした者。
 また、原則オンライン上の会話や会議となり、ちょっとした雑談が減り、顔を合わせていたら直ぐに確認できた事も瞬時に進まない不自由さを感ずる者。上司部下の関係では、マネージメントのやりにくさを訴えている者。仕事のパフォーマンスは変わりないが仕事のオン・オフの切り替えが難しい、何か違うんだよねと話す中高年。
 更に、コロナ感染の不安から治療を中断している者が複数名いました。その中で軽症ではありましたが小脳出血を発症した者、自身の判断で食事と運動のみで頑張ったが効果得られず、内服の必要性を再認識できた者、不眠・うつ状態で多剤服用していたが中断し逆に体調が改善した者、等々です。
 在宅勤務による生活習慣の乱れや受療中断が危惧され、当初からHP、安全衛生委員会、個別連絡等でタイムリーなコロナ感染予防も含め生活習慣や作業環境に纏わる情報や動画の配信に心がけていましたが、社員の健康行動は様々でした。個々のヘルスリテラシーの高さ、変化への対応力、セルフマネージメント力が重要と考えます。
 
○健康支援の状況について
  ニューノーマルな働き方に伴い、対面で実施できていた事もオンライン上の関わりを余儀なくされました。オンライン上での面談、相談、教育、グループワークは可能ではありますが、メリット、デメリットを十分理解した上で、目的により使い分けることが大切と実感しました。
 特に復職時、就業規制面談、メンタル面の相談などにおいては、上半身のみの映像と声だけでは、ノンバーバルな情報把握が不十分で医学的判断が困難であることから人事部門と十分協議して、初回は対面で実施、その後はケースの状況により判断としています。
 また、健康診断についても、従来は事業場単位で実施出来ていましたが、居住地ベースでの働き方に変化しつつあるため、居住地エリア受診での検討も必要だと思います。
 健康維持・増進活動としてWeb上のウォーキングイベントの参加率は数年漸増傾向でしたが今回は減少に転じています。
 事業所の推進者も在宅勤務となり、直接社員への勧奨ができなかった事も要因と思われます。
 
○今後に向けて
 コロナ禍における健康支援ということもあり、各部門でスピード感を持って業務に取り組んでいると思われます。今後の事案も含め、自社にどのような健康支援や体制が必要か、ヘルスリテラシーの醸成をどうしていくのか、どうしたら社員が健康でいきいきと働けるのか、穏やかに生活できるのか等々。専門職として健康意識が双方(会社・社員)で高まっているこの時期こそ、関連部門(人事・健康支援部門・健保)と課題を整理して協働で今後の施策を再構築する良い機会と考えます。
 2021健康経営優良法人中小規法人部門『ブライト500』の申請がはじまっています。この機会にエントリーすることもお勧めです。   
 
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