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産業保健看護職のひろば

相談員コラム

コロナ禍の今、必要とされる健康支援とは~複数事業所の支援から考える~
2020-12-08
コロナ禍の今、必要とされる健康支援とは
~複数事業所の支援から考える~
産業保健相談員 高清水 幸美
 
 長期化している新型コロナウイルス感染症は、スピード化、国際化を逆手に取るかのように世界に蔓延し、日々の暮らしや生活、働き方を一瞬にして変えてしまいました。
私たち産業看護職も、先の見通しが立たない中で環境変化に応じた対応を日々考え、悩み工夫しながら進めているところではないでしょうか。
 私は、事業所規模に応じて週1回~月1回の稼働で活動していますが、それぞれ事業所の実情が異なり、何を優先させるか迷いながら進めてきました。活動で重視した点と活動から見えてきた課題を整理してみました。
<活動で重視した点>
1.正しい情報の提供
 国の指針、行政指導は状況に応じて日々変化し、エビデンスも多岐に渡り何が正しいのか迷った。まずは、国、行政、関連する学会の情報をチェックし更新して、現状をおさえるようにした。事業所の産業医、人事労務担当者と情報を共有し、変化があった際は情報提供を行った。
 
2.事業所の新型コロナ感染症対策の方針、ルールの理解に努めた。
 活動する際、事業所のルールがわかっていないと、従業員への問い合わせの対応や予防活動が不十分となるため、方針やルールの確認を行った。小規模事業所からは、ルール作りへの相談があり、参考となる資料の提供や、雛形を作成して協働ですすめた。
 
3.イレギュラーな健康管理の対応
 健康管理の基本となる健康診断が計画通りに進まず変更を余儀なくされた。人事労務担当者と定期的に打合せをもち相談窓口となった。事後措置では、従来の基準での対応が困難であったため産業医とハイリスク者の範囲、優先順位を決めて対応した。感染拡大時は文書指導を優先し、対面の場合でも人数制限を行い、換気や消毒の徹底、面接者との距離や座る位置に配慮した。指導教材は紙媒体からPC教材に変更し、大画面モニターに接続して使用するなど工夫した。工場ではPC使用できない職場もあるため、リモート面談用の部屋とPCを確保し、指定時間に入室してもらうなどプライバシーの配慮と感染症対策を行いながら実施した。対面では人との距離、温度感が信頼関係をつくりやすい。リモート面談では相手との会話のタイミングや間の取り方も難しく、緊張して表現がうまくできないこともある。息遣いや顔色、表情、全身の状態など観察での判断も不十分となるため、メンタル相談や復職時面談は対面で実施した。
 
4、 個別対応
 血圧や糖代謝の数値が要医療レベルであっても、感染を恐れて受診に抵抗を示す方もいた。受診しないことで悪化すると重症化リスクが高まることを説明し、医療機関情報を調べて受診しやすい環境をつくった。また、すでに治療中でかかりつけ医がある方については、発熱時に受け入れてもらえるかどうか、前もって主治医に相談していくよう促した。
 
<課題>
1. コロナ禍での健康問題が事例として顕在化してきた。
メンタルヘルス不調の相談、うつ状態で休業となるケースが増えてきた。体重増加や高脂血症などテレワークによる運動不足が影響している方、腰痛や肩こりなど訴える方もいた。仕事に集中して休憩をとらないケースや机を購入していないという新入社員もいた。テレワークを作業環境の視点で見ていく事も重要と感じた。一方、通勤時間がなくなり時間を有効に使っている方は、新たな生活リズムを構築しストレスも少なく順応できていた。予防活動につなげていくには、事例や調査から健康課題を把握し整理することが必要と考える。
 
2.面談の在り方の検討
コロナ禍が収束しても、変化した働き方は継続していくと思われる。リモート面談の利点、欠点、適用条件は何か事例から整理し検討が必要である。
 
 今回、掲載にあたり自身の活動から必要となる支援について考える機会となりました。産業看護職の皆様も個々に活動をすすめられていることと思います。活動事例を整理していくことからはじめてみませんか。
 
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